長靴日記8 名前: ゴム長婦人 [2007/09/05,16:03:31] No.178 返信
視界から母が消えると自分の部屋に戻った律子はベッドに腰掛けて改めて手足のにおい嗅いだがそこであの匂いが消えて石鹸の匂いに変わってしまっている事に気が付いた。「なんだお風呂に入ったらあの匂いは消えてしまうのか」まだあの匂いが体に染込んでいると思った律子はいささか残念な気分になったがすぐにベットから立ち上がるとそのまま階段を駆け下りて玄関に脱いだままになっている自分のゴム長を手に取り顔の高さまで持ち上げて匂いを嗅ぎだした。「ああ、やっぱりこの匂い長靴やら合羽はこの匂いがするんだ。これがゴムの匂いなんだと」と改めてゴムの匂いというものを認識した。そしてすぐ横に掛けたままになったいる自分の合羽を着込むと濡れたままになている自分のゴム長を再び履くと玄関のドアを開けた。雨はさっき母が出掛けていったときよりも更に激しく降っていたが土砂降りの雨の怖さよりももっと乱暴に豪快に水浸しの中を歩いてみたいという気持ちのほうが強く働いた律子は思い切ってその一歩を踏み出した。どうせ長靴は濡れてしまっているし、こんなひどい雨ならば母も直ぐにはかえってこないだろうという思いも律子の行動を助長させた。「母が帰ってくる前にもう一度お風呂にはいればいい・・」そんな事を思いながら律子はまだ自分のゴム長でも余裕のある水溜りを走って突入したり水溜りの中で飛び上がってして水しぶきがあがるのを楽しんだがそれでは飽き足らず空き地をどんどん大またに歩き出した。すでに道と空き地の境界など判らない状態になっておりたちまち律子のゴム長では歩くことの出来ない深さのところまできたがすでにゴム長が濡れてしまっていることで気が大きくなっていた律子はそのまま歩みを続けた。がほんの数歩歩いたところで律子のゴム長にすごい水圧がかかり律子が驚いている間もなくゴム長の中に水が入り込んできた。気が付くと水の深さはゴム長の丈をはるかに超えて律子の膝をも隠していた。急激な恐怖感に襲われた律子は滝の様に降り注ぐ雨の中で立ち尽くしてしまったが「ああ、駄目帰ろう」と我に帰って顔を上げた視線の先にこちらに向かって歩いてくる人影・・女性を認めた。「うん、おかあさん?」一瞬そう思った律子だたが近づいてくるその女性は出掛けていった時の母とは全く違う白のTシャツにベージュのホットパンツを履き膝寸の白いゴム長を履いていた。自分のゴム長も完全に水没状態でありながらも押し寄せる波を割いて進む大型船の様に近づいてきた女性を律子がだれであるか気づく前に「律っちゃん、こんなところでなんしとるがいね。お母さん今買い物に行ってるげんろ。ちゃんとお家で待っとらんと駄目やわいね」と叱り口調で話しかけてきた。そう話しかけながら近づいてきたのは律子の母同様に水溜りも率先してジャブジャブ歩く事で子供達からも人気の高いヒロ君のお母さんだった。普段の雨降りであれば「おばさんの長靴のほうが長いからこんな水溜りなんかへいきだぞー」などと言いながらつま先で水を蹴り上げたりもするおばさんだったが今日はそんな言っている状態ではない、地域の子供達をちゃんと守らなければいけないという一地域住民の顔になっていた。「さっき商店街の近くでお母さんと会ったけど律子は家で留守番してるってゆうとったがいに、こんな水の深いところまで来たら駄目やがいね」「今日はお母さんやらおばさんの長靴でも長靴の中まで水が入ってきてジャボジャボになってもてるげんよ。さっきお母さんと会った時もお母さんの長靴も水が入ってジャボンジャボンになっとたがいね」「えっ、本当に?」「ほや、2丁目の踏み切りの手前からはもうお母さんやらおばちゃんみたに長い長靴履いとってもぜんぜん歩けんがや。さぁ、そこまでおばちゃん一緒に行ってあげるからお家へ帰りまっし。お母さんには何も言わんから」「うんわかった」律子は素直に頷くと一緒に並んで歩き出した。5〜6歩歩いたところで二人ともゴム長が姿を現しだしたが一歩歩くたびにポッチャンポッチャンと履き口からから水が溢れ出た。律子の長靴のくるぶしまでしか水に浸からないほんの僅かな場所まできたとき「さ、律ちゃんおばさんにつかまって長靴の水だしまっし」そういうとヒロ君のお母さんは両足に少し力を入れた状態で立ち止まり腕を律子に差し出した。律子は両手で腕をつかみゴム長をまず片方脱いだ。脱いだと言ううより足を抜いたという感じでゴム長はべチャっと音を立てて倒れ中の水が流れ出た。しかし倒れて場所自体が水溜りだったので手にとってさかさまにすると半分くらいの水が今度は勢いよく飛び出してきた。両足とも水を出して履き直すと今度は「おばちゃんもここで一度脱ぐからつかまらせて」といって律子の手を借りたが律子が脱ぎ履きをしている間にすでに踵を底から離したいたので律子よりも素早く負担を掛けることなくゴム長を脱ぐと方足を上げたままゴム長を逆さににして水を出したがそれは律子の想像以上に多量の水が出てきた。「律ちゃん、ありがとう。もうこれで家へ帰るまで水が入って来ることないわ」「おばさん、ヒロ君迎えに行ってその後どっかいっとたん」「おばさん、今年は学校の学年委員になっとるからお父さんやら、お母さんが迎えにこれん子らの下校するがんに付き添いいってがや」「ヒロもきょうは村谷さんのお母さんにたのんだがや」「わっ、ヒロ君かわいそう・・」「なんで」「だって村谷さんさんのお母さって長靴履いていても水溜りなんか歩くとすぐに{水溜りなんか歩いたら駄目、ちゃんとよけて歩きまっし}って直ぐにおこるんやもん」「ほれに履いている長靴も給食のおばさんみたいに短い長靴やし」「ほれもヒロも言うとったね。でも今日はそん事も言うとれんわいね」「うん」「さっここまできたら大丈夫やろ、はよお家帰りまっし」「うん、おばさんありがとう」ヒロ君の母と別れると律子はそのままジャバジャバと自宅の玄関へ向かった。