長靴日記7 名前: ゴム長婦人 [2007/08/29,19:36:24] No.166 返信
一瞬戸惑いとも困惑とも思える表情を顔のだした母だったがすぐにいつもの笑みにもどって(ほやねぇ〜律子ももう一足長靴あったほうがいいかもしれんね。お母さんも長い長靴履いとっさかいに水溜なんかも平気で歩くけど律子も気持ちは同じやもんね)(ほや、私かってお母さんみたいにもっともっと平気水溜りやら泥んこ道も歩きたいもん)(判ったよ、ほんなら今日買い物に行ったときに律子の長靴もう一足買ってきてあげる)(わぁーやったぁー、本当なん)(うん、ちゃんとこんてきてあげるよ。何色がいいがかな。やっぱり白にする)(うん、白がいい。ほやけど赤があったら赤がいい。でも子供用じゃなくって大人用・・私も一緒に行くけど) が母の次の言葉に律子は少し落胆した(今日はお家にいまっし。長靴の中は濡れて無くても体は汗やらでゆれてるでしょ。お家に帰ったらお風呂沸かしてあるからすぐに入って体温めんと風邪ひくがいね。)言い方は優しいが有無をいわせぬ口調に律子は少し驚きながらも承知した。いつも優しく微笑んでいることが多い母だが時として強い口調で律子を嗜めたりする母だった。そして立ち止まった母は近くの電柱に片手で体を支えると(ちょっこしまっとって。長靴の中の水ここですてるから)といって片方の長靴から脱ぎだしたが足を抜くのと同時に水が飛び出してきた。その後母が長靴を手にして逆さまにするとこんなにもはいっていたのかと思うほどの水がでてきた。律子が(そんな沢山水はいとったが)(長靴の長さの分入るがいね。お母さんの長靴は長いからね)そして両足とも水を出すと両手で履き口をもち子供の律子から見ても綺麗と思える素足を再びゴム長の中へ入れた。そして(どんな長靴を買ってくるかたのしみでしょ。それを楽しみしてさぁ、歩け、歩け。お家までもう少しや)と再びいつもの優しいく口調に戻った母は水溜りの中に道がある状態になっている自宅への道を再び豪快に闊歩し始めた。律子も母に追随するかのように今までに無く大胆な歩き方をしたが自宅の手前数百メートルのところまで来たときそれまで本降り状態で小康状態になっていた雨が再び激しく、まるでバケツをひっくり返したかの様な降りになった。あっというまに道路から砂利や土の部分が水に多い尽くされてしまった。律子は急に怖くなったが同時に母が手をつないでくれた。そして(お家まではしろ。長靴中水入ってもいいから)そういううや否や母は律子の手を引いて走り出した。母が跳ね上げる水しぶきと律子が跳ね上げる水しぶきが交差しあい互いの合羽、コートの裾より下に掛かるがそんな事はお構いなしに二人は小走りに走った。不思議と足元が掬われる深みはなかった。母は水溜りの深さなどを熟知していたのだ。上から降り注ぐ豪雨、二人が互いに跳ね上げる水しぶきで律子の長靴の中も浸水状態ではないがかなりぬれてており着ている合羽もおとんど用をなさないくらいに体が濡れてきた。それでも5分ぐらいだろうか小走りに走って来た二人は漸く自宅の玄関にたどり着いて。(律子、長靴の中に水はいっとる?)(うん、ちょこしだけはいいてもてる)(ほんならここでいっぺん長靴脱いで水だしまっし)(うん)そう返事をすると律子はご自慢の白いゴム長を脱ぎさっきの母と同様に逆さまにして水をだしたが思ったより水がはいっていたのに驚いた。それを見た母は(やっぱりこんだけひどい雨ふっとって二人してバシャバシャとはしってきたらしょうがないね)といいながら玄関のドアノブに手をかけてドアをあけ(さっ入りまっし)と律子に促すと自分も後ろ向きに入り込みドアを閉めた。そしてフ〜と一息つくと(さっここで合羽脱ぎまっし、足も濡れたままいいからそのままあがんまっし)といいながら律子が合羽を脱ぐのを手伝いそのまま脱いだ合羽を丸めて上がりかまちの隅に置くと水滴が滴り落ちているマントの様なコートのボタンとファースナーを外して自分も脱いだ。コートを脱いだ母を見てり律子は驚いた。コートの下に着ていたブラウスにも完全に水が染み込み11歳の律子が見ても綺麗だと思う母の体がくっきりとその姿を現していた。ブラウスがべっとりと体に吸い付くようになっているのでその豊満なバストもラインをくっきりと表していた。そして水滴がついてしっぽり濡れながらも怪しく光る長い黒髪。スカートではなく半パンツから伸びる綺麗な足。親子でありながら早熟な律子は母に対して嫉妬心ともライバル心といえる思いを感じた。大雨の中を歩き続け頭の先からつま先まで全身びしょ濡れになってもなお女の怪しい光を放つ母が(どうしたの、はよあがんまっし)と促された律子はハッと我にかえりゴム長を脱いで玄関を上がった。ついで母もコートを框の隅に置くと片方づつゴム長の踵を框の下部にひっかるようにしてゴム長を脱ぎ廊下に上がった。そして(さっ律子、ランドセル自分の部屋に置いたらすぐにお風呂にはいりまっし。着替えはお母さんがだしておいてあげるから。)律子は(うん)と返事をするとすぐ横手の階段から2階の自分の部屋に上がりランドセルを置いた。ランドセルを置いて上体を真っ直ぐにしたときだった。律子の鼻をあの匂いがくすぐった。律子はこの匂いと思ったが濡れた衣服のせいで急に寒気を覚えて母に言われた通り階下の浴室に向かった。コの字型の階段のちょうど真ん中まで来たときだった。まだ玄関に母がいるのが気配で判った。あと2〜3段で階段が終わろうとしている所まできた律子は母の姿を見てハッとした。母は自分のゴム長を顔まで持ち上げまるでその匂いを嗅いでいるかのようにみえたのだ。律子の気配に驚いた母は少し慌てたのか(はよ入りまっし。風邪ひくよ)と言ってきたが何かしら見られたくないものをみられて慌てている様子に見えた。(お母さんは入いらんが)と律子も無意識の内に口から言葉がでたが(お母さんはまだ入らんわいね。今から買い物にいかんとあかんげんさかい。律子の長靴も買ってこんとあかんやろ。)(ほやけどお母さんもいっぺんお風呂入って服着替えて、買い物行ったほうがいいちがうん)(そうしてもまた帰ってくるまでに体濡れてしまうわいね。長靴もあのまま履いていくし、コートもそのままきていくからね。)(へー何でもうひとつの白い長靴はかんが。ほれにコートも普通の雨のときに着てるコートあるがいね)(どうせまた濡れるからそのままのほうがいいがや。長靴も濡れてもてるから今度も深い水溜りなんかあっても気にすることないやろ。コートもあのコートが一番濡れんのやよ)(ふ〜んよんなん)(さ、はよお風呂入りまっし)妙に言いくるめられてしまった様な気がしたがそんなものかと律子もまた妙に納得したのだった。風呂から上がると母はちゃんとホットケーキを作ってくれていた。律子にそれを食べるように母はいつもの優しい母の顔にもどっていた。
食べ終わるまで付き合ってくれた母は(じゃ、お母さんいまから買い物いくからね。どんな長靴買ってくるか楽しみにしててね)と標準語で話すと玄関へ向かい再びまだ濡れているコートに腕を通し中がグッショリと濡れているゴム長に足をいれて玄関の中でフードを被った。そして(じゃ、行ってくるからね。)と言葉を掛けるとくるりと背中を向けて玄関のドアを開けた。ドアを開けたその外は滝のような雨が降り続いていた。母はドアを片手で閉めながら一応傘をさした。そこまで見届けた律子は2階へ上がり窓辺から出かけてゆく母を追った。そこに見えたのは滝の様に降る雨の中大海原になった空き地を何の躊躇もなく傘を上下に揺らしなが小走りに走る母の後ろ姿だった