長靴日記6 名前: ゴム長婦人 [2007/08/29,16:52:52] No.165 返信
「これが私の好きな匂い・・ 律子は母の背中に背負われながらコートにしっかりと顔をつけて自分の好きな匂いに浸っていた。母のコートに降りかかる雨が水滴となって幾筋にもなって滑り落ちそれが顔を濡らすのも今の律子には気持ちよかった。どのくらいの時間だったろう・・ほんの数分だったと思うが{もう大丈夫よ、おりなさいという母の声でわれに返った律子はバシャと音をたてながら再び道路に足を着けた。まだ道路は浸水状態だったがその深さは律子の履いているゴム長靴のくるぶし位の深さしかなく母のゴム長靴にすればそれは単なる舗装道路にたまった水溜りに過ぎない状態だったで親子は再び豪快な水しぶきを上げながら歩き始めたが、そのとき母のゴム長はすでに浸水状態になっていたことに律子は気付かなかった。しばらく歩くうちに母の歩き方がいつもよりさらに平気というか乱暴な歩き方にみえてきた。雨が降り続く中律子がいることも忘れているかと思えるほど、いつもなら少し歩調を落として歩くところも今日はまったく意に反さない豪快とも投げやり的とも思える様な歩き方で激しく水しぶきをあげバッチャバッチャバシャバシャという音が降り続く雨の中でもはっきり聞こえるくらいの歩き方だった。今思えばあのときの母は今の自分同様に完全に自分の世界に浸りこみ楽しんでいたことが判るのだが、当時の律子にはまだそこまで理解する事には無理があった。律子はは母にーお母さん凄い!いつもほんなふうにして歩くんー律子の声に母は一瞬ハッとした様子を見せたがーごめん、ごめん、お母さんの長靴さっき律子をおぶさっていたときとうとう長靴の中に水が入ってきてもて今お母さんの長靴の中水でチャッポンチャッポンになってもてるがや。ほら・・(そういって律子の前に水が入り込んでグチュグチュいいながら履き口から水が溢れ出しているのを見せた)お母さんの合羽が長いから律子からは見えんかったがやね。ほやさかいお母さんももう怖いもんないとおもていつもり平気で歩いとったんかもしれんねー母はそう言いながら律子の顔を見て微笑んだ。律子は少し不満だった。自分には替えの長靴がないから中まで濡らすなといいながら、母は仕方が無いとは言え長靴が水浸しになってしまった事を返って楽しんでいるかのように見えたからだ。これが他の意味、目的もあってその通りだったことなどその時の律子は知る由もなく、それを理解できたたのは5年程後の事だ。律子は母にー明日までにお母さんの長靴乾かんかったらどうするが。明日も絶対長靴履かんと外歩けんと思うげんけどーそんな律子の問いかけに母は予想外の返事をしてきたーああ、お母さんなら心配せんでも大丈
夫ながや。お母さんはもう一足長靴持っとるがやー ーえ〜ほんなんー −あっ律子は知らんかったんがかな。去年の秋にも大雨降ったことがあったでしょ。ほんときもお母さんの長靴買い物行くときに中まで水入ってきてもてぐしょぐしょになってもたんやけどほんときにお父さんが長靴もう一足あったほうがいいやろって会社の帰りにこうてきてくれたんや。この長靴と殆どおなじ位の長さなんやけど色が白なんやわ。白の長靴やと律子やらがはいたらどんな服着てもいいし可愛く見えるけどお母さんぐらいになるとそれに合わせて服も考えんとあかんからそんなに履かんかったから律子が知らんかったんがかなー −ほんなんやったら私も長靴もうひとつ欲しい。私もお母さん見たいに合羽と長靴で水溜りでもどろんこの道でも平気で歩きたいもん。私、長靴が一杯脱いである玄関の匂いやらぁ〜、さっきお母さんがおぶさってくれたときした合羽の匂いも好きになってもてんー 相変わらず降り注ぐ雨の中バシャ−バシャージャーップジャーップと水しぶきをあげ音を立て歩きながら続く律子と会話に母は微笑えんでいたが律夫子の最後の言葉に母の顔から笑みが消えほんの一瞬だが戸惑いとも困惑ともとれる表情が現れた。 十数年後、離婚して実家に一時的に身を寄せていた律子に、まだそのときも現役の母はーああやっぱりお前には私たち二人の血が流れていたのねーという会話をするが、今降り注ぐ雨の中で交わされた会話がこれから先律子がのめり込み身を焦がすゴムとゴム長抜きでは到底考える事の出来ないエロス、ゴムフェチ世界への序章であった。