長靴日記4 名前: ゴム長婦人 [2006/12/09,18:21:36] No.2118 返信5年生に進級し発育の良かった律子は既に学童サイズの長靴では合わず婦人物の長靴
を新しく買った。白の無地の長靴で筒の長さが30センチ程の長めの長靴で今まで履
いていた長靴よりゴムが厚く少し重い様に思われたが、歩くとガッポガッポとあの長
靴独特の音がはっきりして律子は急に大人になった様な気がして嬉しかった。靴屋で
その長靴に履き替えてアーケードの通りに出ると母は律子の長靴にぴったりと自分の
長靴を寄せて「まだお母さんの長靴の方が長いんやざ」と微笑んで歩き出したが自宅
に帰る為にバスに乗ると母は普段利用するバス停の一つ手前でブザーボタンを押した。「お母さん、どこ行くん」「オリオン寄って晩御飯のかいもんせんとあかんでしょ、オリオン行くんやったらこっちで降りた方が近いんやし」「あっそうか」「さっ、降りよ」「うん」母に続いて降りるとバスのステップの下がもう水溜りだった。バシャバシャと水溜りをバスの後の方へ歩くと直に左へ延びる道があり母は「こっち
からいこっか」と言って歩き出した。「え〜っこっちから行ったら工場の横ぐらいか
らすごっく大きくて深い水溜りがいっぱいあるし、ほこから先はなんもまだ道が出来
とらんとってグチャグチャの泥んこの広場になっとるけどいいん?」「律ちゃんの今
日こうた新しい長靴やったら大丈夫。今まで履いとった長靴に比べたらずっと長いや
ろ」「うん、ほや」「ほしたらこっちから行ったほうが近道になるんやでぇー水溜り
もぉー泥んとこもなんも気にせんと歩けばいいわね。」「わぁーやったぁー」そう言
いながら微笑む母の顔を見ると律子は駆け出し水溜りに両足で飛び込んだ。後ろから
母もバシャバシャと水溜りに入ってきて「さっ、歩け歩け」と言いながら本当に自分
も楽しそうに歩いて行く。この時律子はお母さんもきっと長靴を履いて水溜りを歩く
のが好きなんだ子供心に思い出し思い切って母に聞いた「ねぇ、お母さんって一人で
かいもんなんか行く時も、長靴履いとったら水溜りやら避けんとって歩くんか。」「ほやぁー。お母さんは長靴履いてるのにわざわざ水溜りなんか避けたりせんよ。雨
やら雪の日に長靴履いとって足元なんか気にしながら歩くなんて厭やもん。」そして
にっこり笑いながら「それに律ちゃんらと一緒でお母さんも長靴履いて水溜りやら泥
んこ道歩くのは好きやし、大人でも子供と一緒で楽しみたい事はあるんよ」「へぇ〜、ほやけど水溜りなんかなんも気にせんと颯爽と歩くお母さんってカッコいい。」
「ほやろ」「うん、本当言うと悠太くんやらメグのお母さんも・・おばちゃんも長靴
履くの大好きや、ほやさかい水溜りなんかもジャブジャブ歩くよ・・って言うてぇ皆
から人気あるんやって。ほれにお母さんも」「あらぁーお母さんも人気あるんや」「うん!」そんな会話を交わしながら足を進めた水溜りはさすがに深く二人とも歩調
を落とした。その先のぬかるみでは長靴の半分まで泥に浸かり更に先にある水溜りで
ベトベトに付いた泥を片足で落として歩き続けたがこの時の律子には自分の母親も長
靴を履くのが好きなんだと思った程度だったが今思えば単にそれだけではなく父と言うよりも母にとっての夫の事も考えていたのだと思う。