長靴日記3

長靴日記3 2006/11/29
ゴボッグチャ回想に更け出した律子の足が自然に少し動いた。律子は純然たるサラリーマンの家庭で育った娘だった。母も父も優しく両親の愛情を一杯に受けて育ってきた。美しく優しい母は専業主婦で律子が帰宅すると必ずといっていいほど家に居たので夕飯などの買い物などもよく一緒に出かけたが特に雨降りの日に母と外出するのが楽しみだった。母は律子が水溜りへわざと入っていっても全く叱ることも注意する事も無く、むしろ率先して水溜りを歩いてくれた。深い水溜りなどでは「ほら、お母さんの長靴の方が長いからこんな水溜りでもへっちゃらだぞー」と片足でバシャーと水を蹴り上げて微笑んでくれたりした。それが嬉しくて夕食の時に父親に話すと「そうかお母さんも一緒に水溜りジャブジャブ歩いてくれるか。楽しいだろう」といって父も自分の事の様に笑ってくれた。母が「ピッチピッチチャプチャップランランラン」と口ずさむと父は決まって「お母さんはピッチピッチチャップチャップランランランじゃなくってバシャバシャジャブジャブランランランだろう」と微笑み律子が「うんそう!」と言うと母は「貴方ったら」と優しい顔で笑っていたが律子はそれが一家団欒の楽しいひと時の会話だと思っていた。しかしそれがそうではない事に徐々に気付き出しそれが決定的となった出来事に遭ったのは律子が17歳高校2年のある雨が激しく降りしきる深夜の事だった。その時既に律子はゴム長とレインコート、ゴム合羽を中心にしたゴムの世界、ゴムの匂いの虜にたっぷりと浸かっていたのである。その為か律子の眼前に繰広げられる光景に普通の17歳が受ける衝撃とは全く違うであろう「自分は完全に両親の血を受け継いだのだ。紛れも無く自分の体の中に両親のフェチの血が流れている。」という定めよ様なものを思い知ったのだった。